イスラム教のモスクから流れるアレはコーランじゃなかった。
イスラム教が根付いた国を旅していると、各所に “モスク” がある。
イスラム教徒(ムスリム)たちが神を崇拝する建物だ。
イスラム教というと、中東を中心としたアラブ諸国をイメージするが、実際はそれだけではない。
同じアジアであれば、インドネシア、マレーシアなどもイスラム教を主な宗教とする国であり、世界で二番目に人口の多いインドもヒンドゥー教に次いでイスラム教徒の人口が多い。
なので、アジア含めちょっと海外へ行ったことのある人なら、わりとモスクと “モスクから流れるアレ” に触れたことがあるのではないだろうか。
モスクから流れる、お経のような声。
その音量は、結構なボリュームである。
時には、気づかずモスクの近くのホテルなんかに泊まってしまって、早朝アレによって叩き起こされる羽目になることもある。
ここから、イスラムの礼拝が始まる。
「お、礼拝をやってるんだな。」
旅行者はそう思って、まるでアレがイスラム教の聖典『コーラン』を唄っているかのように勘違いするのである。
「なんとなくだけど、落ち着く気がする。」
いくつかイスラム圏を旅した旅行者はそう感じるだろう。
そして、少し困惑するのである。
「コーランを聴いて落ち着くなんて変かな。イスラム教じゃないのに。」
私もそうだった。
実際のところ、アレはコーランではない。
アレは『アザーン』といって、
「イスラムの礼拝が始まるよ」という呼びかけだったのだ。
礼拝の時間を知らせるチャイムのようなものだ。
ただ、肉声というのが特徴的だ。
ただし、このアザーンでも
『アッラー・アクバル』=「神は偉大なり」を繰り返し言っている。
アザーンは「礼拝が始まるよ」というお知らせであって、決してコーランではないのだが、その中でもきちんと偉大な唯一の神・アッラーを讃えているのだ。
すると、旅行者はやはり少し困惑するだろう。
アレに落ち着く、自分に。
イスラム教のモスクから流れるアレがコーランじゃなかったとしても。